あらすじ
児童ポルノ摘発事件を発端にそこへ至ったマイノリティたち、現代社会に生きる所謂「頭のおかしい人たち」はどう生きて、何を悩み現代社会に身を潜めているのか。
不登校の子供を持つエリート検事、だれにも言えない性的趣向を持つ男女、男の視線が怖いジェンダー女子大生それぞれがマイノリティを抱えながらどのようにして社会とかかわっていくのかを描いた作品。
現代社会で声高らかに叫ばれている社会的に許容されやすい「多様性」と社会的に許されない、許容されない「少数派」、普通ではない人たちは社会や自分自身とどう向き合っていくのか?明日死なない事を前提に設計された社会で普通に生きていく難しさが描かれている。
感想
自分がいかに多数派であるのかを自覚させられた作品でした。作中では水そのものに性的興奮を覚える男女が描写されていました。彼らは水に興奮を覚えるため彼氏彼女のような恋愛関係を結ぶこともありませんし、猥談もあまりしっくりこないまま話を合わせています。恋愛の話や猥談はその人の性的な趣向が人間である前提で成り立っています。自分も雑談程度にこのような話をすることがありますが、その時に相手が人間に興奮を覚えない事を可能性に入れたことはありません。これだけではなく世の中には多数派が可能性すら考慮しない事に悩み、生きている少数派が隠れながら生きていることを自覚しなければならないと思いました。
また、「あってはならない感情なんて、この世にはない」という台詞が気に入りました。最近の風潮だとマイノリティを認めるべきという流れが主流になっています。例えばゲイだからといって社会や制度的に差別を受けるのは問題だし、あってはならないことだと思います。でも、友人がゲイだとカミングアウトして自分に視線を向けられたときに気持ち悪いと感じる嫌悪の感情もまた、認められるべき感情だと思うし、それを認めないのは弱さを武器にした卑怯な行為だと感じます。(ただしそれを表に出すのは別問題です。)
作中でも語られていましたが結局のところ社会的に認められない「頭のおかしい少数派」が生きていくためには同じような仲間と繋がり本音の共有をするしかないのだと思います。明日、死なないために…
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